忘れられない変態2


結婚する前、位(くらい)の高い変態が住むアパートの向かいで、一人暮らしをしていた事があります。


ある日、遊びに来ていた友人が小声で悲鳴を上げました。



「おじさんが見てる!怖い怖い」と真剣に怯える彼女は、隠れようと(?)しているのか、身を屈めながら私に「窓をしめて!」と訴えてきます。


非日常が大好物の私。「なになに〜?何がいるの?」とワクワクしつつ振り返ると…



向かいのアパートの窓辺には、仁王立ちする男性の姿が!


室内からの照明が逆光になっていましたが、浮かび上がった輪郭からは彼が全裸でこちらを向いている事が見て取れました。


「これは変態だ!」

「本物だ!」


腰に手を当てたまま微動だにせずこちらを見つめる姿からは、変態としての開き直りや誇りが感じられます。



とりあえず、その日は静かに窓を閉めて対処…。事なきを得たように感じられました。



しかしこの日を皮切りに、変態はほぼ毎日ベランダで仁王立ちをするようになります。当初は友人や彼氏(現旦那)に相談しながら、


やれ「男物のパンツを干して、“男が住んでますアピール”をしてみてはどうか」とか、

やれ「もう引っ越してみてはいかがか」とか、

やれ「警察に言うべきじゃないのか」とか、

やれ「でも通報したのがバレたら怖くない?」


…とか話していたのですが、慣れてくると窓から全裸の男性が見える事が日常になってしまい、次第に私は(向かいに全裸がいる事以外)以前と同じ生活を取り戻したのでした。



とくに危害があるわけでもないし、気にしなければ私の生活に何の影響もありません。



また、あまりにも毎日同じポーズだから、もしかするとアレは人形なのかもしれない…という見解も登場。人ではないのかもしれない、という可能性は、ますます私から恐怖心を拭い去って行きました。


ところがその後、アレは人形ではない事が発覚します。


ずーっと仁王立ちを貫いてきた変態ですが、ある夜とんでもない事をはじめたのです。



全裸で、夜のベランダから、放尿!



人形じゃなかった!


人形じゃなかったよ!


ここに来て初めて強い恐ろしさを感じた私は、間も無く結婚を決意しこのアパートを引っ越したのでした。


免許更新のたびにメガネの度数が上がります。

木村華子(ライター)のブログです。

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